逗子披露山の家  completion:2018.07

photo by Ikko Dobashi

神奈川県の南東部に位置する逗子市、披露山庭園住宅地。
西に富士山と江の島、南に大島の眺望を備えた、風光明媚で緑豊かな環境に包まれた住宅地である。昭和43年に標高80mほどの小坪山で造成開発されたこの地は、厳しい建築条件や地下埋設された電気設備等、徹底された景観保全の管理・運営により、おおらかで豊かな住環境が保たれている。
この日本一とも評される住宅地に週末住宅兼ゲストルームを計画することとなった。

敷地は十字路に面した北西向きの角地で、北側道路と敷地は最大で2Mほどの高低差がある。敷地が一段高くなっていることから北西方向への視界の抜けは良好で、江の島、富士山を敷地から一望できる。周辺環境と双方のプライバシーを保ちながら、眺望を最大限確保する必要があった。
建物は南北に配した、それぞれが深い軒を有する大小二つの棟から構成されている。深い軒は日本の気候と相性が良く、屋根が描く美しい稜線は日本的な美を感じさせる。また、ヴォリュームを二分し一方の高さを抑え、樹木を豊富に施す事で、高さ方向のヴォリューム感を緩和。植栽と建物が同程度のヴォリューム感で共存し、周辺へ圧迫感を与えることがないよう配慮している。
南棟は地下1階地上2階の3層とし、1階はセミパブリックな空間としてのLDK、2階はプライベート性の高い各個室、地下は隠れ家のようなシアタールーム兼バーを配置した。北棟はパブリックな空間としてゲストルームや書斎を2層構造で計画し、南棟からの眺望に配慮し半階下げて建物高さを抑えている。
スキップフロアとなる2棟間を中庭や抜け感のある階段で繋ぎ、それぞれが緩やかな関係性を保ったまま空間を二分している。
1階は周辺とのプライバシー、共存に配慮し極力開口部を設けず、諸所に配した中庭から採光と通風を確保している。耐久性の観点からもコンクリート造とし、2階は眺望の為、窓面を最大限確保できるよう木造ラーメン構造(KES工法)を採用した。2階バルコニーの腰壁は、眺望を確保しつつ周辺からの視線を遮る為に必要な高さを、綿密な検討の上設定している。
床材や天井には無垢材、壁には漆喰等、自然素材を使用している。月日を重ねる事で深い輝きと味わいを増していく。緩やかに成長する樹木は、次第に建物を覆い、更に緑深い豊かな場所へと変えていく。

場所には特有の地域性や歴史がある。
決して奇を衒うことなく、この場所に佇むに相応しい建築でなくてはならない。
煌びやかな輝きではなく、重厚で鈍い輝きを放つ。神社仏閣のような日本の「美」の意識にもう一度目を向けた。明るさや構造材の細さ、軽さではない。太く力強い骨格、陰のある空間が重要なのである。この建築はこれから先長い年月を経て、深い輝きを増し、より重厚な空気感を纏うだろう。この地の歴史を共に刻み、永く在り続け、日本の「美」を感じさせる建築となることを切に願っている。

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