瀬戸内の家  House of Setouchi completion:2008.03

photo by Takahiro Shimokawa

Japanese

English

 瀬戸内海が眼下に広がる山腹。  南東の尾道水道から南西に目を向ければ、瀬戸田をはじめ大小の島々を遠くまで臨むことができる。  北西側には瀬戸内海国立公園に指定されている筆影山を背負い、森の空気が清々しい。  この場所では鳥のさえずりや木の葉のそよぎが耳に心地よい。  坂道を登りこの敷地に到達すると、目の前にひらける風景に思わず息をのむ。  敷地はかなりの高台にあり、この建物の2階から視界を遮るものは何もない。  我々は、この場所にふさわしい家を建てようと考えた。  美しい景観を最大限に享受できる家である。  
  建物は、鉄筋コンクリートと鉄骨造の2階建。  1階をコンクリートの閉じた箱とし、寝室とサニタリー、スモールリビングによって構成。  箱の上部 ~ 2階部分には、リビングおよびダイニングキッチン ・ 書斎スペースを配置している。  2階スペースは、これといった間仕切りは設けていない。  あえて言うなら吹き抜けの中庭、ガラス越しのシンボルツリーがその役割を担っている。  壁面には360度、水平窓を設けた。  「 窓 」 というより 「 ガラスの壁 」 という発想である。  建て物を取り囲む景観は全てが魅力的であり、どの側面に対しても閉じる理由が見つからなかった。   
 景色を堪能しようと思えば、余計なものは何一ついらない。  サッシの枠さえも風景を分断してしまう。  よって、この枠を天井からの下がり壁の小口に隠すことにした。  カーテンも適さないと判断し、障子を選択。  さらにその障子も横のスライドではなく上下のスライドとし、サッシ枠同様下がり壁の中に格納した。  ガラス下・床面から30㎝の立ち上がりは、ここで過ごす人々の自由な寛ぎ場所である。  好きな場所で好きな風景を眺め、好きなコーナーで、好きなことを楽しめる。  キッチンはステンレス製を採用。  美しさを保てるという機能に合わせ、その硬質な印象が窓外の緑をより一層引き立てると考えた。     
 ここでは 「 時 」 を存分に堪能することが出来る。  四季の移ろい ・ 一日の移ろい ・ 天気の移ろい ~ 空と海、木々の色彩と影が、時を教えてくれる。  陽がある時間帯のパノラマ的な美しさは格別であるが、月夜の晩も殊更に美しい。  水面に映る白光は静謐であり、眼下の小さな町灯りと相まって趣深い。  室内灯を消して月あかりに過ごせば、美しい異空間を感じることができるだろう。  月のない夜にはキャンドルを灯しても素敵である。  炎のゆらめきは四方のガラスに幾重にも映り込み、昼間とは違った表情を醸しだす。     
 この建物は、敷地に委ねる感覚を大切にしながら計画されている。  設計の中で建て物に対しての造作を吟味し、余分なものは引き算しながら造り上げてきた。  美しい環境と建物を一体化させることに重きを置いた結果、一見モダンではあるが落ち着いた空間を構成することができた。  景色を満喫できる空間での暮らし方 ~ その自由性の高さを大切にすることで、建物はおのずとシンプルな構成となった。
 自然の原風景や瀬戸内海を往来する船を生活の一部に取り込み、ゆったりとした時間の流れに身をゆだねる。  ここに暮らす豊かさや安らぎを、この建物を通して提供していけたら幸いである。


河口佳介 + K2-DESIGN
主宰 河口佳介  
■Location-optimized Design
The land is located on the south coast, commanding a panoramic view of the island-dotted Seto Inland Sea.To the north is Mt. Fudekage in Seto Inland National Park. Situated on a 3 meter high retaining wall, the land is one story higher than the other residences in the neighborhood, thus there is nothing to interfere with the view from the second floor. In order to optimize the house for the surroundings, we designed a concrete enclosure on the first floor, and above it, made a transparent living, dining and kitchen area which affords a 360 degree horizontal view.
■360° view: "living in the landscape"
The site is surrounded by an abundance of nature. Birdsong can be heard from the woods, and ships can be observed sailing on the sea. In contrast to the hustle and bustle of city life, here even time seems pass slowly. The continuous, 360-degree horizontal window frames the picturesque scenery and the slow passage of time through the landscape. Through the uninterrupted sweep of the window, sunlight continuously changes the atmosphere of the room. The windowsill, at 30cm high, is designed to be used as seating. Residents are free to pick a spot from which to enjoy their favorite view. One can easily spend a day admiring the view from one side or another as the day progresses. To relax by this window is to abandon oneself to a moment of luxurious tranquility, so different from the hectic life of the city.
■Details
To enhance the impact of the panoramic ocean view, we focused on simple design, yet avoided the usual structures which would disrupt the continuity of the view. The deep windowsill and the wooden trim above the windows hide the window sashes, making each window a simple opening. Shoji - sliding screens of wooden latticework and Japanese paper - are used instead of curtains. Unlike the common horizontally-sliding screens, which need storage space when open and would disrupt the view, we used box-head sliding screens which slide vertically upwards, out of sight, to maintain the perfect 360-degree opening

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